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現在地: Home プロジェクト 寺島文庫通信 2011年 第7・8合併号より 「第10回日総研フォーラム」

2011年第7・8合併号より

第10回日総研フォーラム 財団法人日本総合研究所40周年 
寺島実郎 総括講演 「日本の試練―この危機をどう創造的に乗り切るか」
2011年7月20日(水) 会場:時事通信ホール

  2011年7月20日、時事通信ホールにて、寺島実郎が理事長を務める財団法人日本総合研究所主催の第10回日総研フォーラムが開催されました。1970年8月設立から40周年を迎えた今年の開催は、設立当時から関わってきた野田一夫会長のあいさつと、明石康氏と家田仁氏を招いてのパネルディスカッション(2面掲載)があり、その後寺島による総括講演が行われました。
 寺島は冒頭、日総研40年を振りかえるとともに40年間の日本円の為替変動に言及、その後訪米報告を行いました。さらに今考えるべき課題として、新しい国家エネルギー戦略について語りました。
「民主党政権となって昨年6月に原子力重視の政策となったものの、今回の東日本大震災による福島の原発事故で原子力は補助的・過渡的なエネルギーとして位置づけざるをえない。オイルショックを経験した1970年代には再生可能エネルギーは結局実を結ばなかったものの、現代のグリーンニューディールは技術基盤の確立により系統化が可能であり70年代とは違う。
 しかしそれでも原子力をどう位置づけるかは、日本の国際的責任と文明論的視点の双方からみても重要である。文明論的視点におけるキーワードは技術。近代主義者は新幹線や高層ビルのように等身大でない技術に身をゆだねて生きている。我々は効率やスピードを求めて技術を進歩させてきた。
 また、事故を起こした福島第一原発が旧世代に属する初期型であるのに対し、世界を見れば現在の原発は3.5世代型まで進みつつあり安全性を高めていて、中国などで建設予定のものも次世代型である。さらに従来と設計思想が違う、より安全な、例えばビル・ゲイツが推進する小型原発も開発中である。将来日本が原発から手を引いたとしても、近隣諸国や世界は原発の開発を進めていく。我々はパンドラの箱を開いてしまった以上、責任をもって原子力の平和利用を制御していくという選択肢があってもいい。この話は、日本の復興論の中に創造性や未来を埋め込まなくてはならないとはどういうことかという1つのケーススタディである。」
 寺島は以上のように述べ、最後に8月発売の新刊をとりあげ、震災後の思考停止から再起動し、自身の頭で考えるヒントにしてほしいと述べました。(文責:寺島文庫だより編集班)