寺島文庫

火曜, 4月 30th

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一期一会と絆外国人に対応する日本の二面性

ペトラ・カルロヴァー(Petra Karlova, Ph. D.)

  「一期一会」は、茶道で生み出された日本文化の大事な心得です。これは、「あなたとこうして会っているこの時間は、二度と巡っては来ないたった一度きりのものです。だから、この一瞬を大切に思い、今出来る最高のおもてなしをしましょう」という精神によるものです。このような考えから、日本のおもてなしは世界で認められ、サービスのレベルが高いことでよく知られています。これは外国人観光客に対しても当てはめられる考え方で、「わざわざ遠くから日本に来てくれたので、日本を楽しんで、良い思い出を持ち帰ってもらいたい」という日本人の思いがあるのでしょう。

 観光客として来た外国人に対しては、このようなおもてなしをしますが、一方で日本に在住する外国人に対してはどうでしょうか。

 近年、繰り返し日本を訪問する外国人が増えています。それに、日本はグローバル化を目指して、外国人にもっと日本で活躍してもらいたいと考えています。しかし、それは、組織的な面でいくつかの障壁があります。

 第一に、日本人にとって所属が非常に大事だということです。出身地という所属も重要ですが、一般的にどの学校・大学を卒業したのかという学歴での所属は現在・将来における所属においても大きな意味を持ち、社会的な判断の対象になります。組織に入るときに、同じ地方の出身の人や同じ大学を卒業した人がいたら、新しい組織での先輩になることが一般的です。なぜかというと、日本では人生プランが大体の日本人に共通するのです。これにより、年功序列が維持されていて、上下関係が構築されています。このように、組織での一人ひとりの位置づけが入るときに設定されます。しかし、外国人の場合、故郷は外国で、日本の大学・大学院を卒業していない場合もあります。この場合、日本の年齢の感覚とのずれが発生することや、上下関係が構築しにくいことがあります。「これは2年下の後輩です」などと紹介してくれる所属の先輩は存在しません。
 このように、日本においての過去との絆や繋がりがない人は、社会的な障害者のようなものです。日本は特に絆や継続性を大事にする文化なので、それらがないことは大きなハンデとなるのです。もし上司が先輩を決めなければ、面倒見てくれる人がいない可能性があります。

 また、縦社会の中で育てられた韓国人やベトナム人など以外の国の人であれば、上下関係の感覚が身についていないので、組織内の自分の位置づけや皆の行動を理解するのが難しいでしょう。その場合は、外国人に日本のマナーを教えるか、外国人に合わせるかという大きく二つの対応方法があります。しかし、どちらの方法でも100%で対応することはできないので、結果的にどちらかの傾向が強くなるでしょう。中途半端になる場合、色々な誤解が発生する可能性が高くなります。

 最近日本のグローバル化が求められ、日本人が外国人に合わせることが必要だと強調されますが、それもまた難しいことです。外国在住などの経験がない日本人は、当然どう合わせればいいか分からないでしょう。そのため、外国人に対する反応は十人十色です。「一期一会」というようなおもてなしをしている日本人もいますし、絆で繋がってない人だから自分に無関係という態度をとる日本人もいます。「一期一会」を長期的に継続するのは難しいことです。時間の経過と共に、外国人との個人的な絆は結べますが、組織的な絆は組織の皆で協力して構築するしかないのではないでしょうか。(2012.12)