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<「コーオプ教育」が学生、企業、そして地方創生に与える可能性 ― 東京工科大学の挑戦>

 
  2014年、東京工科大学(東京都八王子市)のコーオプ教育が『朝日新聞』で紹介されました(2014年12月19日)。コーオプ教育とは、大学カリキュラムの一環として学生に就業体験の機会を与えるプログラムであり、その名前には教育機関、企業、そして学生の三者が協力して作り上げる(Cooperative Education)との意味が込められています。

◆東京工科大学の試み
 東京工科大学は、首都圏での理工系大学初となるコーオプ教育に取り組み、本格実施に向けて2014年夏に19名の学生が1週間~1ヶ月の就業体験を行いました。今年4月に新設される工学部(定員280人)ではフルタイムで8週間のコーオプ教育を必修科目としています。このため、学生を受け入れる地域企業数100社を目指し連携を広めています。八王子とその近隣地域は製造業やICTなど開発型の中堅・中小企業が集結しており、工学部の学生には最適な場と言えます。

◆コーオプ教育のメリット―学生の就業体験として
 インターンシップは学生の社会人基礎力向上や職業観を育てる上で有効ですが、コーオプ教育では、ワークプレイスメントと同様、「給与」が支給されるので社会人としての意識と責任感が実感できます。
 東京工科大学はオリエンテーション、企業とのマッチング、就業体験中のフォロー、さらには振り返り等、コーオプ教育の効果を高める体制を整えています。こうした恵まれた環境の中、自らの専門分野を生かした業務を体験することで、学生はさらに学ぶべき専門知識、適職、そして自己の将来像を明確化できます。

◆産学連携の促進と地域活性化への処方箋として
 受け入れ企業や地域にもメリットがあります。東京工科大学がコーオプ教育を通じて見えてきたのは、デジタルサイネージやクラウドサービスといった新産業分野は企業内での人材育成が難しく、大学と連携して人材育成を行いたいとする企業ニーズの存在です。こうしたニーズは大学教育にフィードバックされ、企業と大学との新たな連携に繋がります。加えて、東京工科大学は「地域連携課題」を授業に加えるなど、地域課題を発見し、解決する人材育成を追求しています。
最近注目され始めたのは、コーオプ教育を軸とした地域企業と大学との連携が、新たな産業創出と地域人材の育成を促し、ひいては若者の地域離れを食い止め、地域を活性化する可能性です。今後は、学生教育という視点に加えて、企業や地域を包括した地方創生というグランドデザインの中からコーオプ教育を捉える試みが求められるでしょう。

 
<参考資料>

 ・東京工科大学ウェブサイト
 ・『朝日新聞』
 ・小川高志  「人口減少時代における地方創生のヒント―若者の地域離れを食い止めるために」
  (『EY総研インサイト』VOL.3, 2015年2月)