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2012年第12-13合併号より

第2期寺島文庫リレー塾 『世界を知る力-日本創生への視座-』
最終回(第6回):寺島実郎塾長講義 テーマ:「2012年への視座」

 
2012年1月17日(火)赤坂アークヒルズクラブルームにて、第2期寺島文庫リレー塾が最終回を迎え、「2012年への展望」をテーマに寺島塾長が講義し、以下のように語りました。

 1951年サンフランシスコ講和条約の頃25億人だった世界人口は、今世紀を迎えた時61億人に、昨年には70億人を超し、2050年には93億人になると予測されている。そして70億人がよりよい生活を求めて自己主張を強めている。いま世界は先進国主導の多極化といった時代から、「極」では説明できない無極化の時代となり、全員参加型に向かっている。一昔前の価値観からすると世界は混沌として秩序形成が難しいだが、別の見方をすると真の意味でのグローバル化が始まっているのかもしれない。
 日本人は戦後65年間アメリカに影響され続けてきたため、アメリカを通じてしか世界を見ないというものの見方・考えた方を身につけてきてしまい、二国間ゲームの中だけで国を展開してきた。しかし、20年前日本の貿易の4割を占めていた対米貿易が昨年1月~11月期には11.8%まで下がり、一方、中国との貿易は20年前にわずか3.5%だったのが2割を超す勢いだ。そして大中華圏が3割、アジアが5割超を占めている。日本の経済を意識する時に、この構造が頭の中に叩きこまれていなければならない。
 日本の人口は2007年にピークアウトし、2046年には1億人を割ると言われているが、震災の影響もあり、おそらく予測を前倒しで1億を割るだろう。1966年に1億人を超えた時から、日本は人口が3千万人増えることを前提にしたビジネスモデルを構築してきたが、今後3千万人減ることを視界にビジネスモデルを切り替えるのは非常に難しい。厚生労働省の中位予測では、2100年には1907年頃と同程度の4,771万人に収斂するだろうと予測されている。しかも65歳以上の人口比重は2割を超え、2050年には39.6%になると言われている。世界人口の爆発的増加と、日本人口の急速な減少の両方を頭に置いて、戦略やビジネスモデルを考えなければならない。
 
 昨年、日本経済の「空洞化」が騒がれたが、実態として既に進行し始めているキャピタル・フライト(資本の海外流出)を日本の1,400兆円の個人金融資産を持つ人たちが本気で考え始めており、今年更に進行するだろう。増税で問題解決しようとしているが、消費税増税についてはOECDの平均消費税が17.3%であり、税体系を移行していくことにはそれほど抵抗感や違和感はない。しかし、手段の議論を全面に持ち出し、このような国をつくりたいというビジョンが一向に見えず、とにかく増税で財政均衡に持っていくことだけが政治目標になってしまっている。
 
 最後に政策科学、社会科学をやっている人間として、現状の解説や解析ではなく、あるべき時代の方向感について発言しなければならない役割意識を持っていると述べ、今年も新しい発信力のある人たちを招きこんで第3期寺島文庫リレー塾を開催したいと抱負を語り、講義を終えました。また、講義後には、今期全6回の講義に皆勤で参加いただいた受講者の方、そして前期から今期まで引き続いて皆勤で参加いただいた受講者の方に賞状と副賞を贈呈し、多くの皆様のご協力のもと盛況のうちに幕を閉じました。

2011年第11号より

第4期多摩大学リレー講座 『現代世界解析講座Ⅳ 21世紀初頭の10年を超えて』
秋学期中間回:寺島実郎学長講義
2011 年11 月10 日(木)  会場:多摩大学多摩キャンパス 001教室

 tama112011年11月10日(木)、寺島が学長を務める多摩大学における4年目リレー講座の秋期中間回講義が開催されました。このリレー講座は多摩大学学生の必修科目であるとともに、多摩や東京西地域を中心とする一般社会人にも公開され連続開催されています。
 秋期12回の折り返し講義となるこの第6回で寺島実郎は、TPP問題、アメリカ流資本主義のもたらした歪み、そして大学就職難の状況と経済だけにとどまらないアジアシフトについて言及しました。
 かねてより発言を続けてきたように、TPPに関する賛否を産業対農業の闘いという構図にしてはならず、食料自給率を高める努力と共に慎重に進めなければならないこと、また未だ国内産業構造の調整が取れておらず、この先各国との協議過程で主体的役割を果たす可能性が低い現在、選択できる措置は、日米二国間の包括的自由協定の交渉を粘り強く働きかけることだろうとの示唆を述べました。
 また、アジアシフトの流れは就職難問題にも大きく関与しており、今や就活生のコンペティターは日本人学生だけではなく、外国人や外国大学出身者と同じ土俵でスキルや向上心を競い合う現実について語りました。大学の位置づけや親世代の感覚における問題点を指摘し、社会を広い視野で捉える事の重要性とこのリレー講座のテーマを改めて語り、講義を結びました。

2011年第10号より

第2期寺島文庫リレー塾スタート
初回講師:寺島実郎塾長 「いま我々が生きる時代をどう認識するか」
2011 年10 月19 日(水)  会場:日本工業倶楽部会館 大会堂
 寺島文庫では、社会人や若い世代に向け時代に対して真剣に向き合っている人の話を体系的に聞き、時代を考えるヒントになる機会を提供することを目的に、昨年より寺島文庫リレー塾をスタートさせました。2 期目となる今年も、国際情勢や政治経済、ジャーナリズムの各分野における精鋭の専門家を招いて、国内外の諸問題を多角的に取り上げる3 カ月間の体系的なカリキュラムとなっています。
 第1 回講師の寺島塾長は、「いま、我々が生きる時代をどう認識するか」というテーマを掲げ、与えられた時間の中で、できるだけフィールドワークを重ね、文献にあたり、自分の頭で考える努力を続けることの大切さを訴えました。寺島自身が物事を立体的にとらえ、熟考するようになったきっかけとして、1963 年放映の大河ドラマ『花の生涯』(舟橋聖一原作)を観た時の体験を語りました。同様の内容は、10 月30 日にTV 番組「NHK アーカイブス」でも放映されました。
  『花の生涯』は、桜田門外の変で果てた大老井伊直弼の生涯を描いたもので、比較的否定的なイメージで捉えられがちな井伊になぜ『花の生涯』という真逆のタイトルをつけたのか。また、本著に書かれた「知性の薄い興奮し易い頭脳が、この国では熱血漢として珍重される。何故、広い世界に目を向けようとしないのか」という井伊の思いをつづった一文に強い衝撃を受け、その時高校生であった自分が人間は物事を単純に考えてはいけないのだと実感し、このことも今の寺島の物の考え方や歴史観につながったという経験を語りました。
 また、震災後の日本がどの道を歩むべきかについて触れ、「米国一極主義の崩壊、覇権なき中東、そして欧州危機といった急激な世界的パラダイム転換に直面し、震災を受けた日本の思考が内向きになるのも理解できるが、今こそ、日本がどの道を選択していくべきか、議論を深めるプロセスこそが重要である」と述べました。

2011年第9号より

『世界を知る力 日本創生編』刊行記念講演会・サイン会
2011年9月12日(月) 会場:紀伊國屋書店新宿本店・紀伊國屋ホール

  2011年9月12日(月)、紀伊國屋書店新宿本店にて、寺島実郎著書『世界を知る力 日本創生編』(PHP新書)刊行記念として寺島実郎の講演会が開催されました。ホールを埋める350名超の聴講者を前にPHP研究所横田氏の司会の下、講演は行われました。
 冒頭、寺島は講演前日が9.11から10年、3.11から半年となる節目であり、世界のパラダイム転換の中で3.11が起こったことに触れ、注視すべき9.11後の構造変化として、アメリカ流資本主義の破綻、アフガン・イラクでの失敗によるアメリカ財政の悪化、人民元の台頭とドル需要の低下、ドル基軸体制の崩壊等の国際金融情勢について説明しました。その上で、9.11や3.11に対する根拠のない不安と恐怖心がもたらす思考の単純化から脱却し、筋道立った「思考の再起動」が今問われており、高村光太郎の詩(PHP新刊4頁)を引用した上で、冷静に思索の道を立て直す努力の重要性を語りました。また、新刊の執筆自体が日本の進路を模索する思考のプロセスであったと紹介しました。
 
 後半は、第2章「日本人の魂の基軸とは」で親鸞に触れていることについて、3.11後の日本の状況にも似た戦乱の時代を生き、民衆に新しい生き方・思考の基軸を提示した親鸞の生き様を噛み締めることは、日本創生を語る上で意味のあることだと述べました。また、宮城県震災復興会議副議長を務める自身の復興構想を第4章で論じていることに触れ、国民参画型で「復興プロジェクト推進隊」のようなプラットフォームの必要性、さらに、第5章内のエネルギー戦略については国際エネルギー分野で日本の発言力を維持する上で、原子力の技術基盤維持やこの分野へ人材を立ち向かわせることの重要性について論じました。
 最後に、寺島は新刊を通して若者に考えるヒントを与えたいと伝え、講演を締め括りました。講演終了後はサイン会が行われ、本会は盛況のうちに終了しました。

今後の講演会・サイン会についてはこちら

2011年第7・8合併号より

第10回日総研フォーラム 財団法人日本総合研究所40周年 
寺島実郎 総括講演 「日本の試練―この危機をどう創造的に乗り切るか」
2011年7月20日(水) 会場:時事通信ホール

  2011年7月20日、時事通信ホールにて、寺島実郎が理事長を務める財団法人日本総合研究所主催の第10回日総研フォーラムが開催されました。1970年8月設立から40周年を迎えた今年の開催は、設立当時から関わってきた野田一夫会長のあいさつと、明石康氏と家田仁氏を招いてのパネルディスカッション(2面掲載)があり、その後寺島による総括講演が行われました。
 寺島は冒頭、日総研40年を振りかえるとともに40年間の日本円の為替変動に言及、その後訪米報告を行いました。さらに今考えるべき課題として、新しい国家エネルギー戦略について語りました。
「民主党政権となって昨年6月に原子力重視の政策となったものの、今回の東日本大震災による福島の原発事故で原子力は補助的・過渡的なエネルギーとして位置づけざるをえない。オイルショックを経験した1970年代には再生可能エネルギーは結局実を結ばなかったものの、現代のグリーンニューディールは技術基盤の確立により系統化が可能であり70年代とは違う。
 しかしそれでも原子力をどう位置づけるかは、日本の国際的責任と文明論的視点の双方からみても重要である。文明論的視点におけるキーワードは技術。近代主義者は新幹線や高層ビルのように等身大でない技術に身をゆだねて生きている。我々は効率やスピードを求めて技術を進歩させてきた。
 また、事故を起こした福島第一原発が旧世代に属する初期型であるのに対し、世界を見れば現在の原発は3.5世代型まで進みつつあり安全性を高めていて、中国などで建設予定のものも次世代型である。さらに従来と設計思想が違う、より安全な、例えばビル・ゲイツが推進する小型原発も開発中である。将来日本が原発から手を引いたとしても、近隣諸国や世界は原発の開発を進めていく。我々はパンドラの箱を開いてしまった以上、責任をもって原子力の平和利用を制御していくという選択肢があってもいい。この話は、日本の復興論の中に創造性や未来を埋め込まなくてはならないとはどういうことかという1つのケーススタディである。」
 寺島は以上のように述べ、最後に8月発売の新刊をとりあげ、震災後の思考停止から再起動し、自身の頭で考えるヒントにしてほしいと述べました。(文責:寺島文庫だより編集班)